
対談:A・ヒューマン代表取締役糸川俊×キャリア塾塾長 松尾順
A・ヒューマンの掲るキャッチフレーズ「30代の選職」に込める、糸川俊の思いとは。
選職のために対談:糸川俊(1)
A・ヒューマンさんのキャッチフレーズとして掲げてらっしゃる「30代の選職」には、いろいろと深い思いが込められていると思います。
糸川俊
松尾:糸川さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします。さて、A・ヒューマンさんのキャッチフレーズとして掲げてらっしゃる「30代の選職」には、いろいろと深い思いが込められていると思います。今日は、そのあたりを中心にいろいろとお話させていただきたいと思います。
糸川:はい、よろしくお願いします。
松尾:まず私が、「選職」という聞き慣れない言葉を聞いて最初に連想したのが「就職」という昔からある言葉です。大学生は、昔は4年に上がる頃から、今は3年生の早い時期からですか、「就職活動」をやりますよね。でも、それで選ぶのは、「職」ではなく「会社」。だから、日本では「就職」ではなく「就社」と言われたわけです。
糸川:そうですね。純粋な「職人」を目指す人はさておき、一般企業に勤めようという学生のほとんどは、実質的な仕事経験がありませんから、自分がどんな職種に適しているか判断できません。そのため、働く場である「会社」を選ぶことになるのは仕方がないことかもしれません。
松尾:まあ、会社側も、特に大手の場合、いろんな部署をローテーションさせることによって、社員にさまざまな職種を経験させる機会を与えますし、その中で社員自身も適性を見極めることができましたしね。
糸川:そうです。ただ、あくまで会社が敷いたキャリアパスに乗っかって動いていただけで、自ら自分のキャリアを設計するという自律的なキャリアでは必ずしもなかったのですが。
松尾順
松尾:確かに。とはいえ、「就社」して以降、何年かの経験を積んで30歳前後になると、おおよそ自分のできること、適していること、やりたいことがある程度わかってきますよね。その時点で、初めて自分が選ぶべき「職業」というか、「職種」が何かを真剣に考えるようになります。ただ、従来は、自分のやりたい「職種」が、今の会社になかったとしても、転職に対する周囲の偏見があったり、大会社で働いていれば、現在の地位の安定性や、大手に所属しているプライド(優越感)といったものを優先して、転職という具体的なアクションまではそうそう考えなかったわけです。ところが、最近の社会人の方は、そんなことにこだわるよりも、自分がわくわくできる、成長できる仕事をしたいという欲求が高まってきましたし、人材の流動化で転職が一般的になったきたこともあって、自分のやりたい「職」を選ぶために、ためらわず転職するという方が増えてきたようですね。
糸川:そうです。実は、そのことに関連して興味深いデータがあるんですよ。現在、就業人口は約6400万人に対し、転職者数は約346万人。つまり、全体の5.4%が転職されているということです。転職者のうち、同業種・同職種に移る人は22.5%ですが、一方、異業種・異職種に移る人はその約2倍以上の48.4%に達しているんです。同じ仕事内容で、単に同じ業界の他の会社に移るよりも、自分の新たな可能性を求めて、まったく違う業種や職種にチャレンジしている人が実は多いということなんです。
松尾:なるほど。転職者の中には、20代前半の人も相当数含まれていると思いますが、過去の経験を活かした横滑り的転職だけでなく、適職探しのための新たな仕事への取り組みという点も転職のきっかけだということでしょうか。
糸川俊
糸川:そうです。また、別の調査では、22歳の新人から35歳までの社会人のうち、実に80%の方が、「いいところがあれば転職したい」と答えているのです。松尾さんが指摘されたように、今の会社へのこだわりが薄くなり、自分のキャリアのために積極的に転職も考えるという意識が高まってきているのは確かです。
松尾:日本もとうとう欧米並みに「自律したキャリア」を追求する時代になってきたということでしょうか・・・
糸川:ところが、日々、弊社にやってこられる転職希望者の方と個別に面談していると、実はそうとも言えないんですよ。まず、自分の強みが何なのかといった、自分のキャリアに対する自己評価があまりできていないことが多い。また、将来のキャリアに対する見通しや自分の属する業界、および他の業界などについての動向や知識もまだまだ限られた範囲でしか把握できていない方がほとんどなのです。
松尾:そうなんですか・・・。会社を変わる、仕事を変わるという目先のことにばかり気持ちがいっちゃってるという印象を受けますね。
糸川:「選職」という言葉には、自分のキャリアづくりに前向きに積極的に取り組むという意味を込めています。だからこそ単なる「転職」と区別し、自ら職を選ぶという「選職」という表現を使っているのですが、私たちA・ヒューマンとしては、転職を希望される方に、キャリアづくりのための基本的な取り組み姿勢についてもきちんと考えもらいたいと願っていますね。


