選職のために

対談:曙ブレーキ工業株式会社 人事統括 松井恭士様 × キャリアカウンセラー齋藤めぐみ(1)

グローバルに展開する企業「曙ブレーキ工業株式会社」。その組織風土や人材戦略について、人事統括の松井恭士様にお話をお伺いしました。

2008年6月10日

選職のために対談:曙ブレーキ工業株式会社 人事統括 松井恭士様(1)

国内だけでなく世界に羽ばたく曙ブレーキ工業。売上の約45%が海外のシェア。グローバルで活躍する人材の採用・育成、組織戦略を担い2004年に曙ブレーキ工業にご入社された松井恭士氏。

外資系企業で鍛え上げた人事戦略のプロとして、全世界で「ブレーキといえば曙ブレーキ工業」と言われる企業を目指されています。

私が曙ブレーキ工業を選んだ理由(わけ)

齋藤:今日は、曙ブレーキ工業の魅力、今後の人事戦略などについてお聞かせください。
はじめに松井さんの今までのキャリアについてお聞かせいただければと思います。

松井様:はい。大学時代に心理学を専攻しており、人事の仕事をする予定で外資系製薬会社に入社しました。はじめのうちは、現場を知るということでMRを4年経験し、その後、人事に異動しました。
その後1年で転職しましたが、外資系のIT企業で日本法人の立ち上げを人事責任者として行い、その後、外資系自動車メーカーに転職して人事を14年半経験しました。

齋藤:ありがとうございます。曙ブレーキ工業にご入社されるまでは、ずっと外資系でのご経験だったのですね。

松井様:はい。そうなんです。新卒で入社した製薬会社では合併を経験し、次のIT企業では吸収合併を経験し、直近の自動車メーカーでは買収を行ったあと、その事業を売却するなど、人事として様々な経験をさせてもらいました(笑)。

齋藤:エキサイティングなご経験ですね!!ずっと外資系人事をご経験されてきた松井さんが、国内企業である曙ブレーキ工業へご転職を決意されたのは、どのような理由からだったのでしょうか?

松井様:そうですね。グローバル企業で自分のこれまでの経験をベースに人事戦略を立てて実践したかったというのが大きな理由です。
外資系企業に勤務していると、海外に本社があり、基本的な戦略は本社で決まる。そしてそれを日本にローカライズするというのが、日本の人事責任者の仕事となります。もちろん、そこに日本としての戦略も入るのですが、やっぱり海外企業の子会社的な位置づけになってしまいます。

齋藤:なるほど。本当の意味での「責任者」として人事戦略を立て、実施していきたいとお考えになってのご転職だったのですね。

松井様:そうです。かつ曙ブレーキ工業は国内と海外の売上比率が、55%:45%と、海外でのシェアが増えてきています。つまり、今後はグローバルな視点で人事戦略が必要になります。その際に今までの外資系で培った経験が活かせるのではないかと考えたことも、転職理由の一つです。

齋藤:今度は人事トップとして、海外拠点の人事の方々に戦略を浸透させていく立場になられたのですね。

松井様:はい。外資系企業出身者だと、日系企業への紹介が殆どなかったのですが、曙ブレーキ工業から内定をいただき、決めました。担当役員の方とお会いしたときに「グローバル企業として強くなるために、今のやり方を変えていかなければならない」という課題をお伺いし、今までの自分の経験が活かせ、かつストレッチ(成長)できると感じました。

齋藤:そこに迷いはなかったのですね。

松井様:悩んだのは、長距離通勤になるということだけでした(笑)。とはいえ、これから携わる仕事のやりがいを思えば、通勤の苦労よりもやりがいが上回っていたので、問題なく意志決定しました。

曙ブレーキ工業は世界で1つである

齋藤:松井さんがご入社されてから、グローバルで通用する人事戦略としてどのような施策を行ってこられたのですか?

松井様:まず「グローバル企業」としての考え方を共有しておきますと、曙ブレーキ工業という会社は世界で1つ。という考え方に基づいています。「国」は違っていても一つの「会社」という考え方です。この考え方に基づいた戦略になります。

齋藤:国ごとにバラバラということではなく、会社として統一したコンセプトということですね。

松井様:入社したころには、既にアメリカとヨーロッパの拠点はあったのですが、マネジメントなどローカル(現地)主導になっていました。人事間のミーティングなども一切なかったので、入社した2004年の曙ブレーキ工業75周年イベントの際に人事マネージャーのカンファレンスを開催しました。まずはお互いがどのようなことをしているのかなど、情報共有から始めました。

齋藤:まさに日本が主導で人事改革が始まったのですね。

松井様:はい。当初は情報共有から始め、翌年の2005年には、日本に海外拠点の人事を呼び、「Akebono Leadership Value」というリーダーに求めるコンピテンシー(行動特性)のようなものを全世界共通でつくりました。さらにその翌年の2006年には、人事としての曙ブレーキ工業における役割、ミッションステートメントを作りました。去年、今度は人事の基本フィロソフィー(理念)を持とうということで、ようやく人事改革のスタートを切った段階です。

齋藤:非常に素晴らしいですね。日本主導で徐々に改革が進んでいらっしゃるのですね。松井さん以外の日本の人事のメンバーにどのように松井さんの考えを浸透させていらっしゃるのですか?

松井様:月1回の部の全体会議やグローバルカンファレンスを日本で開催する際にスタッフもメンバーの一員として参加させ、経験する中で学ばせています。今、アメリカに駐在している人事のスタッフもいて、現地の一員として仕事をする中で学ぶことも多いと思います。海外の拠点へのローテーションなども積極的に行っていきたいと考えています。

齋藤:ローテーションをグローバルで行うということは、人事制度や評価制度なども海外で統一していらっしゃるのですか?

松井様:人事基本理念に基づいて基本的な考え方、コンセプトを統一してくように進めています。ただ国によって異なるカルチャーや価値観があるのでそれを尊重しています。マネジメントの仕方なども国の特徴があるものに関しては任せたりもしています。ただ基本的な評価の仕組みは統一し、人事ローテーションを行っても問題ないものにしていきたいと考えています。

齋藤:それはとても安心ですね。人事ローテーションがあるということは、やはり御社では「語学力」は必須条件になりますか?

松井様:部署によっては日常でそんなに頻繁に利用することはないのですが、人事や経理などは海外の拠点とのコミュニケーションが必要ですので、どうしても会話ができないと仕事になりません。ポジションにもよりますが、中途採用で入られる方には英語でコミュニケーションができる程度のスキルは求めていきたいです。

齋藤:語学研修や補助などは実施されているのでしょうか。

松井様:当社の新人研修では、みっちりと語学を含めた海外研修を行っています。入社後1か月で社会人としての基本を学ぶ(マナー等)研修を終えると、2か月、ものづくりの大切さを知る工場での研修があります。その後販売研修を経て、3か月間、アメリカかイギリスでホームステイをしながら海外で課題に取り組むために語学学校に通うというプログラムを組んでいます。

齋藤:すごいですね!ホームステイで海外研修という制度は、あまり聞いたことがありません。

松井様:実際に仕事をしていく中で大切なPDCAを初めて実践する場として、配属後の仕事をイメージしたテーマ(課題)を自分で設定し、その課題を海外で実践します。主役は新入社員自身です。このプロセスを遂行するためにコミュニケーションの1つとして英語が必要になります。帰国したあとは配属先の上司に対して英語でプレゼン発表を行ってもらうものです。これはグローバル人材としての初めての仕事と言えるかもしれません。

齋藤:勉強しながら実際に仕事を通して使う機会があるとは、早く身につきそうですね。

松井様:語学だけでしたら、日本で学べるんです。語学学校に通うだけですから。でも大事なことは、ホームステイや課題を通して、日本語を一切使わない中でコミュニケーションを取る経験や、海外の文化や価値観なども含めて学んできてほしいという思いがあります。

齋藤:本当に素晴らしい試みですね。

松井様:TOEICの点数が高いだけで使えないのでは意味がないですからね。

齋藤:そのとおりですね。新人の方にきっちりとした海外研修を実施されているということですから、中途で入社される方には、相応の語学力が不可欠ですね。

キャリアカウンセラー齋藤めぐみの目線

ご入社されて約4年。突然外資企業から転職してきた松井氏。曙ブレーキ工業の社員の皆様も今までとはまったく異なる人事戦略に刺激を受けられた方も多いのではないかと感じました。次回後編では、どのように組織・風土改革を実践され、また周囲への理解促進を行ってきたのか、そして転職活動中の方々へのメッセージなどをお伝えいたします。

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