
キャリアエッセイ(キャリア塾 on site)
何かが大好きで、夢中になってそれに打ち込んでいると、他のことはまったく目に入らなくなりますよね。
その夢中になれる対象があなたの今の「仕事」だったなら、それはとても幸運なことですね。
『幸せのレシピ』で考える「ワーク・ライフバランス」
こんにちは!
A・ヒューマンキャリア塾塾長の松尾です。
何かが大好きで、夢中になってそれに打ち込んでいると、他のことはまったく目に入らなくなりますよね。
その夢中になれる対象があなたの今の「仕事」だったなら、それはとても幸運なことですね。
寝食を忘れ、時間を忘れてとことんやれてしまう、そんな仕事に就けるのはそう簡単なことじゃありませんから。
しかも、「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、仕事に集中して打ち込むことで、あなたの能力はぐんぐん上がっていきます。時間を忘れるほどですから、誰よりも働いていることでしょう。結果的に、大きな成果を出すことにつながります。その調子なら、昇進・昇給も早いことでしょう。
しかしです。何事もほどほどにしておく必要がありますよ。
仕事は、生活の糧を得る手段であり、かつ自分の個性を発揮できる機会です。また、社会に対して自分がどのような役割を果たしているか、言い換えるとどんな「使命」を果たしているかを実感できるかけがえのない機会です。
だからこそ、人生の中心に「仕事」をどんと置くのは当然のことだと私は思っています。私自身、仕事を中心に毎日が回っています。しかし、それでも本来、
「仕事が人生のすべて」
ではないわけです。
人生のある時期、特に20代後半から30代の間の一時期、「仕事が人生のすべて」と感じるくらい仕事に熱中することは、あなたの仕事能力を飛躍的に伸ばすために重要だとは考えてます。
でも、その時期を過ぎたら、一歩高いところから自分の人生全体を振り返ってみて、仕事だけじゃなくて仕事以外のこと、つまり、家族や、自分自身の趣味や娯楽、仕事以外の友人・知人等とのつきあいなどのバランスを考え直してみることをお勧めしたいのです。
さて、現在公開中(07年9月29日封切り)の映画、
「幸せのレシピ」
は、人生=仕事としか考えられない主人公がテーマです。
まだご覧になってない方のために、ネタばれにならないように書きたいと思いますが、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じる主人公、ケイトは、ニューヨーク・マンハッタンの高級レストランの名シェフです。ケイトは、まさに仕事以外のことをすべて犠牲にして料理人としての腕を磨き、今の地位に登りつめました。しかし、その結果、プライベートでは、恋人も、心を許せる友人もいない孤独な毎日を送っています。
自分が出す料理だけでなく、私生活のあらゆる局面で、常に「完ぺきさ」を求めるために、自分にも他人にも厳格で隙のない人生。
コックとしてのプライドも人一倍高い彼女は、自分の料理にケチをつける客を躊躇なく追い出すほどです。もちろん、彼女はそれで良いと思っています。というかそれ以外の生き方を知らないのです。しかし、実は心のどこかで物足りなさを感じていて、毎週心理カウンセラーのところに通い、心理カウンセリングを受けています。
そこに、現れるのが、イタリアでコックの修行をしたニックです。
彼は、「人生を楽しむ」イタリア人の生き方に学び、オペラを聞きながら軽やかに料理をつくり、何事につけ肩の力の抜けた対応ができる楽天家。ケイトとは正反対の性格ですから、ニックとケイトは、ことあるごとに衝突します。
しかし、ケイトの人生にとって、ニックは、彼女の融通の利かない、こり固まった生き方、考え方をいい意味で破壊してくれるありがたい存在だったのです。
映画の後半、苦労して手に入れたレストランのシェフの座をニックが奪おうと思い込んだケイトは、厨房の裏でニックと口論します。そこで、ケイトは次のようにニックに言うのです。
「このキッチンが私の人生のすべてよ」
この言葉にニックは諭すように言い返します。
「いや、君の人生の一部にしかすぎない」
この後も、まあいろいろとあって、でも最後はケイトとニックは結ばれてハッピーエンドになるのですが、「幸せのレシピ」は、仕事と、それ以外のこととのバランス、いわゆる「ワーク・ライフバランス」について考えるネタを提供してくれる格好の映画です。女性が主人公ですし、仕事や私生活、家庭などとの板ばさみで悩んでいる方は一度ごらんになってはいかがでしょうか。
なお、「幸せのレシピ」のケイトの生き方について、多少野暮になりますがワークライフバランスの観点から問題点を挙げさせていただくと、一生の中で人が持つ役割、すなわち
「ライフロール」
には、さまざまなものがあるにもかかわらず、「職業人」としての役割にあまりにも重きを置きすぎていた点が挙げられます。
しかし、ニックの登場によって、将来の「配偶者」や「余暇を楽しむ人」としての役割に目覚めますし、また不慮の事故によって亡くなった姉の小さな娘を自宅に引き取り、面倒を見ざるを得なくなったことによって、擬似的ながら「親」としての役割にも気づかされます。
こうして、ケイトは、自分という一人の人間の役割の多面性を大事にするようになり、よりふくらみのある充実した生き方を模索するようになっていくのです。
「ワーク・ライフバランス」
については「キャリアデザイン基礎講座の第7回」で詳しく説明していますのでそちらもごらんください。
by 松尾順


