キャリア塾
転職ならA・ヒューマン > A・ヒューマンキャリア塾 > 第5回 キャリアの選択基準

キャリアデザイン基礎講座 第5回 キャリアの選択基準

今回は、あなたが「キャリア」を選択する際に、「拠り所」となる視点についてお話しましょう。まずは、「キャリアとは、いったい何を選択することなのか」という点からご説明しますね。

キャリアの選択は、横軸と縦軸の組み合わせ

「キャリア」を選択することは、具体的には、下記2つの軸の組み合わせだと考えるとわかりやすいでしょう。

・どんな職種に就いているか → 縦軸のキャリア
・どんな業界にいるか → 横軸のキャリア


職種とは、企業内では、営業、企画、マーケティング、研究開発、総務、経理など仕事の中身による分類であり、また専門的職業としての、弁護士、検事、公認会計士、税理士、通訳者などのことですね。

一方、業界とは、就職活動の時にやった、いわゆる「業界研究」で対象とした、金融業(銀行、証券など)、流通・サービス業(商社、卸売、小売、教育、人材派遣、など)、製造業(自動車、造船、精密機器など)などのことです。

あなたの現在のキャリアは、この2つの軸の組み合わせだと、どのように表現できますか。

たとえば、

「自動車業界の会社で、営業職をやっています」
「金融業、銀行で、マーケティングの仕事をやっています」

といった言い方ができるはずです。

先ほど、「職種」のことを「縦軸のキャリア」「業界」のことを「横軸のキャリア」と書いていましたが、この2つの軸を理解しておくことは、特に「転職」を考える場合に重要になってきます。

すなわち、転職に当たって、自分は縦の軸に沿って移動(縦移動)しようとしているのか、それとも横の軸に沿って移動(横移動)しようとしているのか、ということを意識する必要があります。

同じ業界(会社)にいて、他の職種へのチャレンジ(営業から企画へ、あるいは経理から営業へなど)を目指すのは、縦の軸に沿って移動していることです。縦移動の場合、業界固有の知識はそのまま活かせますが、仕事の内容が異なってくるために、その職種をこなすための新たな知識、スキルを学ばなければなりませんよね。

そして、同じ職種のまま別の業界へ移るのは、横の軸に沿って移動することです。例えば、経理の仕事を不動産の会社でやっているけれど、今度は音楽業界の会社で経理の仕事をしたいというのは横軸に沿った移動です。横移動の場合、仕事の内容はほとんど変わりませんので、仕事をこなすのに必要なスキル、経験はそれほど学ぶ必要はないでしょう。ただし、業界固有の慣行(経理業務であれば、支払いサイトや支払い方法の違いなど)に文字通り慣れなければいけません。

この転職における「縦移動」と「横移動」のどちらがより困難か、あなたが置かれた状況によって異なってきますので、断定的なことは言えません。ただ、一般には、「同じ職種」で別の業界に移動する「横移動」の方が多少楽だと言えるでしょう。雇用する側の企業としては、ある程度即戦力を期待していることが多く、求人対象の職種について、相応のスキル・経験を持っている方を歓迎するからです。

他の職種へのチャレンジ、つまり縦移動は、まず、今のあなたの会社でも「人事異動」によって実現できますよね。。それが見込めない時に、別の会社への転職を考えざるを得ないということになるわけですが、まずは「同じ業界」の別の会社への転職を考えるべきでしょう。これまで蓄積してきた業界の知識は活かせたほうがいいですから。

ただ、これまでやってきた仕事とは違う、異なる職種に就きたいとなるとぐっとハードルが高くなります。企業側としては、求人対象の職種のスキル・経験のない人を雇うと入社後の教育・研修が必要となり、余計なコストが発生してしまうためです。ですから、経験・スキルがない職種に移りたいならば、周到な準備をし、また、「この人ならすぐに一人前になってくれそうだ」と採用担当者に感じさせるような熱意、思いを伝える必要があるでしょう。

なお、転職に当たって、業界も職種も別のところを目指すのを「斜め移動」と私は呼んでいます。

これは、業界知識も職種の経験も、どちらも振り出しに戻るわけですから、転職自体も大変ですし、入社後に仕事をこなせるようになるまでに時間もかかります。つまり「斜め移動」には、多くの苦労が待ち受けていることを覚悟しておかなければなりません。

3つの視点・・・できること、やりたいこと、意味・価値を感じること

次に、キャリア選択において「拠り所」となる視点をご説明します。
具体的には、次の3つの質問について考え、そして、答えることができるなら、あなたはどんなキャリアを選択すべきかが見えてくるでしょう。

・あなたが、仕事に関してできることはなんですか?
・あなたが、仕事に関してやりたいことは何ですか?
・あなたが、仕事に関して、意味・価値を感じることは何ですか?

あなたが、仕事に関してできることはなんですか?

あなたが、これまでの仕事の中で培ってきた知識やスキルはどんなものか、考えてみましょう。一般に、「キャリアのたな卸し」と言われる作業のことです。

仮に、あなたが営業、つまりセールスパーソンとしてこれまでやってきたとします。
その場合、営業をやる上で必要な知識やスキルはどのように整理できますか。

・商品知識
・販売先(顧客)についての知識
・顧客の問題把握力
・顧客の問題解決提案力
・プレゼンテーション力
・説明資料作成力
・見積作成力
・新規顧客開拓力
・既存顧客との関係維持能力

例えば、上記のように記述できますね。
このうち、商品知識や販売先(顧客)についての知識は、勤め先や販売先が変わってしまうとあまり役に立たないものになりますが、それ以外の能力は、どんな業界・会社であれ、応用できる普遍的なスキルといえますね。こうしたスキルを「ポータブルスキル」(持ち運び可能なスキル)と呼びますが、どんな職種であれ、ポータブルなスキルが必ずあるはずです。「キャリアのたな卸し」を行う場合には、この点(あなたが持っているポータブルなスキルは何か)を意識してみてください。

あなたが、仕事に関してやりたいことは何ですか?

この質問に答えるのは多少難しくなりますね。自分が仕事でやりたいことが何かというのは、普段はそれほど考えないものですし。

いろんな答え方があります。単純に、営業がやりたい、マーケティングがやりたい、弁護士になりたい、という職種・職業ベースの答えでもOKです。また、売れるお菓子が作りたい、斬新な自動車を生み出したい、シニアの方に喜ばれるサービスをやりたい、といった仕事を通じて具現化できる「夢」のようなものでもいいですね。

大事なのは、その仕事をやれたら自分がわくわくするとか、楽しいと思えることであるかどうかです。

ただし、「余暇」に楽しむ娯楽ではなく、「仕事」において自分がわくわくしたり、楽しいと思えることを見つけるのは、実際のところ簡単ではありません。そこで、自分のやりたいことを見つけるひとつの方法として、今までやった仕事を振り返り、「いい経験だったな、楽しかったな」と思えることがないか、思い出してみてください。

そうした仕事があれば、その仕事のどこかに「あなたがやりたいこと」のヒントが隠れているはずです。

あなたが、仕事に関して意味・価値を感じることは何ですか?

この質問に答えるのは、さらに難しいと感じる人がいらっしゃるかもしれません。
仕事をやる究極の目的を答えることになるからです。(「キャリアの目的」(第3回)とも関係してきます)

例えば、仕事をやることによって

「お金持ちになれること」や、「偉くなれること」

が実現できるというのが、自分にとって意味・価値があると考える方がいるでしょう。「いくらやりたい仕事でも、あまりに薄給で生活できないのでは意味がない」と考えざるを得ない仕事も実際あるわけですから。

あるいはまったく逆の、

「自分のプライベートな時間を確保できること」

が、今やっている仕事の意味・価値と考える人もいらっしゃいます。
こうなると、仕事だけでなく人生全体の中でのキャリアという視点が入ってきますね。(これは、第7回の「ワーク・ライフバランスのところで詳しくご説明します。)

また、より内面的なものになりますが、仕事を通じて

「自分の知識やスキル、精神性が継続的に成長できること」

に意味・価値を見出す人もいるでしょう。(私の場合はこれがまずあります)


「キャリアの目的」(第3回)で書いたように、絶対的に正しいキャリアの目的というものは存在しません。

あくまで、あなた個人が、どんなことに意味・価値を見出すかが大事です。

ただ、同時にキャリアの目的には、

「良し・悪しはある」

とも、私は書きました。

例えば、

「他人を踏み台にしても、自分の幸せを追求する」

といった考え方を持っていると、いつか限界がやってきます。



私たちは、社会の一員として、それぞれ得意な分野で貢献し、補い合い、助け合って生きています。したがって、偉大な人生の先輩方が口をそろえておっしゃっていることでもあるのですが、

「世の中、人のために、仕事を通じて、自分はどんな貢献をしたいか」

ということが幸せなキャリアづくりにおける「最重要テーマ」なのです。

このテーマは、若いうちは、「きれいごと」に聞こえるかもしれませんし、目先の仕事で結果を出すことに必死なため、なかなかピンとこないと思います。実際、私もそうでした。

しかし、そもそも「仕事」とは、他人が必要としている商品・サービスを提供することによって対価を受ける行為です。すなわち、仕事の本質は、「社会や人へのお役立ち」にある。

ですから、キャリアの選択にあっては、ぜひ、「社会や人へのお役立ち」を前提として、自分は仕事を通じてどんな意味や価値を生み出したいのかという発想を持ってほしいと思っています。

できること、やりたいこと、意味・価値を感じることの交差点

以上、キャリアの選択の「拠り所」となる3つの視点について質問の形でご説明しました。

「できること」「やりたいこと」「意味・価値を感じること」の3つ視点の交差点、すなわちすべてを満たすような仕事(職種、業界、会社)を選択すれば、幸せなキャリアがぐんと近づいてきます。

自分のキャリアの方向性が見えなくなったときは、まずこの3つの視点をじっくり掘り下げてみましょう。


(文責)松尾順

2007年2月8日