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キャリアデザイン基礎講座 第4回 キャリアの心構え

前回は、

「キャリアの持論(自論)」を持つことの大切さ

をお話しました。

「キャリアの持論(自論)」とは、自分自身が心から受け入れられる「キャリアの目的」や「キャリアの意味」のこと。

そして、キャリアの持論は、端的には日々の行動における判断基準となる「価値観」とも言え、持論を持つことによってキャリア上の意思決定における判断の迷いが少なくなり、迅速な決断力と強い行動力が生まれるということでした。

今回は、「幸せなキャリア」をつくっていく上で、基本的に備えておくべき「心構え」についてご説明します。

「キャリアの心構え」とは?

「心構え」とは、文字通り「心の構え方」のことです。自分自身の「キャリア」をどのような「心の構え方」で受けとめ、どのように対応すべきなのかについての基本指針となります。

そしてまた、「キャリアの心構え」は、「キャリアの持論」がある・なしに関わらず、まずこのような「考え方」をできるようになれば、「幸せなキャリア」への道が開けると、私が信じていることです。

この「キャリアの心構え」は、私がこれまで見聞きした様々なキャリアの先輩の方々の話やキャリア関連の本・資料など、膨大な情報や文献を咀嚼した中から取り出したものであり、「これがエッセンスだ!」と考える次の3項目です。

・健全な自己中心主義
・健全な危機意識
・健全な諦念感


上記3つの言葉は、あえて不自然な言い回しにしてありますが、そこにはちゃんとした意図があります。
では、それぞれの項目について説明しましょう。

健全な自己中心主義

端的に言えば、二度とない人生、やり直しのできない人生なのだから、自分が心から納得できるキャリア、人生を選択しましょう、ということ。

自分が納得できさえすれば、またハッピーになれるのであれば、他人がなんといおうが気にしない、わが道を行く。要するに、「ワガママ」、「自己中心的」になるということです。ただし、社会の一員として生きていく以上、人様に危害を与えたりするような行き過ぎた自己中心主義はもちろんだめです。

自分の欲望のままに、殺人や窃盗を行えば犯罪者です。また、犯罪にならないまでも、周囲の人を裏切ったりだましたりすれば、あなたはいつしか誰からも相手にされなくなる。ですから、「健全な」自己中心主義と申し上げているわけです。

前回のキャリアの持論の話の最後に紹介した心理カウンセラー、衛藤信之先生の言葉もまさに、健全な自己中心主義を提唱するものですよね。ここに再掲します。

「一度しかない人生、自分の好きなように生きればいいのです。
 人の言うなりになって、結果的に他人の人生を生きることになってははいけません。 ただし、人様に迷惑をかけてはいけませんよ」

なお、「健全な自己中心主義」にはもう一つの側面があります。それは、「自分の好きなように生きたい」と、あなたが考えるなら、あなたの上司、先輩、同僚、部下、友人知人、パートナー、子供など、周囲の人にも同じように考える権利がある、ということを認識すべきだということ。つまり、あなたが好きなように生きようとした結果、他人の人生を一方的に束縛したり、コントロールしてしまうことは基本的に許されないのです。

各自がそれぞれ自分の納得のいく人生、キャリアを選び、歩いていく。そこには相互理解と尊敬が必要ではないでしょうか。

健全な危機意識

厳しいことを言うようですが、あなたが現時点で持っている能力には、「賞味期限」があります。

ただ漠然と、毎日を過ごしているだけではあなたの能力は磨り減るばかり。そして、間違いなく、新しい業務に対応できない日、要求される成果が出せない日がやってきます。つまり賞味期限切れです。しかも、賞味期限切れになってから我に返っても、多くの場合手遅れ。会社にとっては不要の人材とみなされリストラの対象になっていることでしょう。

こうした悲劇は、大きい企業・組織ほど起こりやすいものです。組織が大きければ大きいほど、内部の変化は緩慢だから、いつまでも今の業務が続くと勘違いしてしいがちだからです。ところが、外部の変化はすさまじいのが現実ですよね。ヒット商品は数週間単位で次々と入れ替わっています。また、成果を出すために必要なスキルもまたどんどんと変化している。

ですから、組織の中で安穏としていると、いつしか取り残されてしまうのです。いつのまにか「役に立たない人材」へと価値がダウンしてしまう。

ですから、私たちは常に、

「現状がずっと続くはずはない」
「自分の仕事は必要とされなくなるかもしれない」
「この会社はつぶれるかもしれない」
「今の能力では通用しなくなる日がきっとやってくる」

といった「危機感」を持っておく必要があります。

おおむね、現在、恵まれたポジションにいる方ほど、

「まあ、なんとかなるだろう・・・」

と安易に考え、楽観的な方向に流されがちになりますので、「意識して」危機感を高めることをお勧めします。

さて、こうした「危機感」は、あなたが予想する上記のような「不幸な将来」が実現した時に備えておくべきことは何か、また、自分の賞味期限を延ばすために、新たに身に着けるべきスキルはなにか、今から何をやっておくべきか、といった長期的なキャリアプラン、行動計画を立てることの原動力になります。

ただし、上記のような危機感が、あなたを不安にさせ、目先の仕事が手につかなくなってしまったりしたらまずいですよね。あくまで、長期的なキャリアデザインのための方便として、「将来の懸念事項」を冷静に把握しようとすることが大切です。

ですから、これを私は「健全な危機感」と呼んでいるのです。
将来の変化に対応するための「ポジティブな行動」を引き出すための「危機感」を持ち続けましょう。

健全な諦念感

科学的に実証されたわけではありませんが、人生は、いわゆる「運命」で8割方が決まってしまうと言われています。

自分の意思でなんとかできるのはわずか8割。どんなに「健全なる自己中心主義」に則り、自分の好きなように生きようとしても、そうは問屋がおろしません。キャリアや人生における出来事は、偶然や運、また他人の意思によって決まることがほとんどです。例えば、会社の人事異動は、いつもいつも自分の望みどおりになるわけではありませんよね。自分が絶対にやりたくないと思っていた部署に配属されてしまうことだってある。こんな時、思い出してほしいのが「健全なる諦念感」です。

しょせん、キャリアも人生も100%自分の思い通りにならない。だったら、いさぎよく運命に身を任せてみようじゃないか、と考えを切り替えるわけです。

「どうせ、私なんかだめな人間だから・・・」と愚痴ってばかりいるのは、不健全な諦念感。これは、決して幸せなキャリアにはつながりません。逆に、結果的に幸せなキャリアにつながる可能性が高いのが、

「うだうだ文句言っても仕方がない。この境遇を受け入れ、自分ができることをやってみよう」

と前向きに取り組む「心構え」、すなわち「健全な諦念感」です。

成功者と言われている人たちの多くは、実は、自分の描いたとおりの人生を歩んできたわけではないことをご存知ですか。

自分ではどうしようもない運命に翻弄されて散々な目に合い、また厳しい境遇の中に投げこまれるようなことになって、腐らず、自分のベストを尽くしてきた人が、結局は運命を切り開き、成功を手にしたのです。

運命をポジティブに受け入れ、ベストを尽くそうとする、これが「健全なる諦念感」という言葉が意味することです。


キャリアデザインを行う時、また日々のキャリアづくりのプロセスにおいて、ぜひ上記3つの心構えを意識して考え、行動してみてください。きっと、「幸せなキャリア」が実現すると、私は信じています。


(文責)松尾順

2007年1月25日