キャリア塾

キャリアデザイン基礎講座 第3回 キャリアの目的

今回は、キャリアの目的について考えてみましょう。

人生やキャリアに目的や意味を求めてしまうのが人間

社会人になったばかりで何もわからず、とにかく仕事を覚えるためにがむしゃらに働いている時、

「キャリアの目的」

なんてあまり考えないものですよね。いや、考える余裕がないといった方が正確でしょうか。



でも、ある程度仕事に慣れ、また会社での自分のポジションがわかり、そして今後の自分のキャリアの行く末がある程度見えてくる30歳前後になると、多くの人は「何のために働くのか」という難しい問いに悩まされることになります。

「働く目的」、言い換えると「働く意味」、あるいは、人生全体にまで視野を広げれば「生きる意味」となりますが、こうしたことに対する答えを求めたがるのは、おそらく人間だけでしょう。

人間以外の生物たちも、一定の知性や感情を持ち合わせてはいますが、「生きる意味」といった哲学的な思考はしてはいません。彼らはただ、生きるために生きています。そして、すでに遺伝子にビルトインされている生きる目的は、次世代に生命をつないでいくこと。つまり、ただ子孫を残すことが、生物の「生きる目的」だと言えます。


しかし、人という種は、ただ生きるだけ、生命をつないでいくだけ、では満足できない。
自分はなんのために生きるのか、生きる意味は何なのかをおそらく、「本能的」に求めてしまう。そしてこの答えが見つからないと、生きることがとてもつらく感じる。働く目的、意味についても同様。

要するに、人は自分の行動に対してなんらかの意味づけが必要なのです。

キャリア、また人生にも、「絶対的な目的」というものはない

実は、こうしたことに対して答えを与えてくれるのが、「宗教」ですね。
残念ながら私は宗教に詳しいわけではありませんので、深入りは避けますが、ほぼすべての「宗教」が人に教えることは、生きる、働く目的や意味、使命です。

ただ、世界には宗教の宗派が山ほどあることからおわかりになると思いますが、唯一絶対的な目的はないと考えるべきでしょう。よしんばあったとしても、あなた自身がそれを受け入れる(=信じる)なければ、それは絶対的なものではないのです。


ですから、そもそも

「キャリアにも、また人生にも、絶対的な目的はない」

ということをこのキャリアデザイン基礎講座では大前提に置いています。


五木寛之氏は、著書「人生の目的」の中で次のようなことを述べています。

“人生に決められた目的(誰にとっても共通の目的)はない。
 人生の目的を強いて言うならば、「自分の人生の目的を探すこと」が目的である”

ちょっと禅問答のような文章です。しかし、ここには、人生やキャリアの真理が書かれていると思います。


五木氏の言葉を私なりに噛み砕いて、あなたに対するメッセージに書き換えるとすると、

“人生やキャリアの目的は、あなただけの目的でいい。絶対的なものでなくていい。
自分が納得できる目的を自分自身で作り上げましょう”

となります。

もちろん、様々な宗教や思想、考え方に触れ、自分が共感できることは、どんどん取り入れればいい。大事なのは、自分以外の誰かがいうことを鵜呑みにせず、自分自身が心から受け入れられる、

「キャリアの目的」や「キャリアの意味」

を作り上げることです。

キャリアの持論(自論)を持て

自分自身が、心から受け入れられる「キャリアの目的」や「キャリアの意味」のことを、私は

「キャリアの持論(自論)」

と呼ぶことにしています。

持論とは、あなたがこれまでに経験したことや、出会った人から聞いたこと、あるいは読書などを通じて形成してきた「あなたなりの考え方」です。

自分が持つ理論だから「持論」と呼ぶわけですが、自分なりの理論だから「自論」と言ってもOKでしょう。


「持論」は、学問における「理論」とは違って、検証不要です。また、普遍性や一般性を必要としません。

あなたの生き方、働き方を支えるバックボーンとなりさえすればよいため、それが真か偽かということを証明しなくてもいい。同様の理由で、あなたの持論は、他の人の生き方、働き方については、必ずしも当てはまらなくてもいい。

つまり、持論において重要なのは、

「正しいか・正しくないか」

「一般的に通用するか・しないか」

ではありません。

「あなた自身が納得しているか・していないか」

だけなのです。

「キャリアの持論」の効用

明確な「キャリアの持論」があると、どんないいことがあるんでしょうか。

持論とは、端的に言えば、あなたの行動の判断基準になる価値観とも言えます。
たとえば、転職するべきか・現在の会社にとどまるべきかといったキャリアの岐路において、明確なキャリアの持論があれば、どちらの道に進むべきかが判断しやすくなります。つまり、判断に悩むことが少なくなる。

転職といった一大事ではなくても、明確な「持論」があれば、日々の様々な場面において判断が早くなりますし、確信を持って行動できるようになる。つまり、「持論」はあなたに、迅速な決断力と強い行動力を与えてくれるのです。結果として、うじうじと悩むことのない、生き生きとした人生が送れるようになるというわけです。

キャリアの持論の作り方

「キャリアの持論」を作るのに焦る必要はありません。一生を通じて形成していくものだと考えてもいいくらいです。また、いったんある「キャリアの持論」を作り上げても、それを自分の生き方、考え方の変化に合わせて柔軟に変えていくことをためらわないこと。繰り返し述べているように、絶対的な目的や意味なんてものはないのですから。

では、具体的にキャリアの持論を作り上げる方法をお教えしましょう。

1.自分の毎日の行動を振り返る

これは、自分の毎日の体験から、自分が何を考え、またどんなことを大切にして行動しているかを内省します。
帰納的な方法だと言えますね。

2.様々な異質な人間に積極的に会う

同じ会社の人間同士は、どうしても同じような考え方になりがちです。そこで、外部の人間と積極的に会い、彼らの異質な持論に耳を傾ける。多様な持論の中から、自分にフィットするものを探してみるのです。

3.良書・名著と言われている本を読む

名著とされる哲学や歴史、文学、自叙伝などをじっくり読む。本は、もはや会うことができない過去の優れた人々の持論に触れる最適な方法です。絶対的に正しい持論はありませんが、やはり良し悪しはあります。優れた持論は、より高い確率で幸せな人生、幸せなキャリアにつながります。ですから、あなたが受け入れるかどうかは別として、優れた持論にたくさん触れましょう。

4.旅行する(できれば海外)

2の様々な人間に会う方法の延長ですが、できれば海外旅行で現地の人々と交わり、自分とはまったくことなる環境、文化の中で生きる人々の考え方を知るのです。日本や特定の地域に閉じこもっていただけでは絶対に見えてこなかった人生の真理といったものに気づくことがあります。

5.文章を書く

自分の考えを実際に文章にしてみる機会を持つ。今流行のブログにチャレンジしてもいいでしょう。実は、自分がどんなことを考えているのか、価値観は何なのかは、実際に文字として外に吐き出した時にもっとも見えてくるものなのです。

2007年1月11日