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キャリアエッセイ(キャリア塾 on site)

2007年11月27日

「高速道路」と「けものみち」(2)

こんにちは!
A・ヒューマンキャリア塾塾長の松尾です。


今回も、現在ベストセラー街道ばく進中の梅田望夫さんの最新刊、

『ウェブ時代をゆく -いかに働き、いかに学ぶか』

の内容をご紹介しながら、私たちのキャリアの作り方についてと考えてみたいと思います。


私たちの目の前には今、「学習の高速道路」が引かれています。

アマゾンによって、世界中の書籍が電子化されつつあるのはご存知でしょうか。昔であれば、外国の図書館にわざわざ出かけなければ閲覧できなかった貴重な書物も、じきに電子ブックとして簡単に購入できるようになるでしょう。もちろん、無料で手に入る情報も知の宝庫です。豊富な情報が自宅にいながら、インターネットを通じて24時間いつでも手に入ります。

したがって、ある専門分野を極めようと思ったら、こうした「学習の高速道路」を利用することで、苦労して学んだ昔の人と比較すると何十倍もの速さでプロに近づくことができます。ただし、問題は、この「学習の高速道路」は万人に開かれたオープンな道路です。誰でも乗ることができる。ですから、あなたとほぼ同じスピードで他人も移動することが可能でしょう。

そうすると、高速道路の行き止まりで大渋滞が起きます。高速道路の行き止まりの先は、プロの道です。これは私なりのイメージですが、「プロの道」は、まだ言語化されていない「暗黙知」が広がる道です。言語化された「形式知」を学んでスイスイ移動できる舗装された「高速道路」とは大きく環境が違います。

高速道路の行き止まりでは、この先にある厳しい「プロの道」を勇敢に進んでいくだけの能力や才能、また意思があるのかを自問し、考え込む人がたくさんあふれているのです。

ここで、梅田氏は、前回ご紹介したとおり、2つの選択肢があることを示してくれています。

(1)大渋滞を抜けようと、「高く険しい道」を目指す
(2)大渋滞に差し掛かったところで、高速道路を降りて道標のない「けものみち」を歩いていく。


(1)は、とことんひとつの専門性を極めるということであり、(2)は、ひとつの専門性にこだわらず、様々な情報、知識、ノウハウなどをうまく組み合わせながら、独自の道を切り開いていくということになるようです。

ひとつの専門性を極めるというのは、すでに目の前にそびえたっている山の頂上を目指すことに似ています。その頂上に目指してたくさんの人が上りますが、頂上に立てるのはごく一握りの人だけ。ほとんどの人は途中で断念せざるを得ないわけです。

一方、様々な情報、知識、ノウハウなどをうまく組み合わせるのは、まだ発見されていない自分だけの山の頂上を目指すようなものでしょう。他に競争している人はいませんから、あきらめずに上り続けていけば確実に頂上にたどりつくことができますね。これは「オンリーワン」を目指すことだと考えられるでしょう。

どちらの選択肢を選ぶのか、それはもちろんあなた次第。梅田氏はどちらを選ぶにしても、「好きを貫く」ことの大切さを説いています。すなわち、自分が対象となる仕事を心からやりたいと思っているか、それをやっていると時間を忘れるほど楽しいかどうかが大事なのです。この考え方は、先日書いた「のめりこめる仕事」と同じです。

オープンソースのOS、「リナックス」を開発したリーナス・トーバルズ氏は、なぜ、金儲けを目的としない、無料で公開するソフトウェアを開発したのかと聞かれて、「Just for fun」(そうすることが、単に楽しかったから)と答えています。そして、彼の作ったOSは、仲間のエンジニアたちから賞賛され、また支援されましたし、その後の急速な普及によって社会的にも大きな貢献をもたらしています。つまり、リーナス氏の生き方は、梅田氏が書いているように、「面白くやりがいのある仕事」だからこそ、没頭して長時間その対象にコミットする。よって社会への貢献度も自然に大きくなる。そのことに自負を持つ。こんな生き方なのです。

とはいえ、好きを貫くのは、とりわけ「高く険しい道」を目指す人にとっては重要であるものの、「けものみち」を選ぶ人はもう少し柔軟にならなければいけません。梅田氏によれば、高速道路を疾走するのに比べると、「けものみち」はまあ何でもありの世界です。好きなこと、やりたいこと、やりたくなくてもできることなどを組み合わせ、ときに組織に属するもよし、属さぬもよし、人とのさまざまな出会いを大切にしながら、「個としてのストーリー」を組み立て、何とかゴチャゴチャと生きていく世界だと梅田氏は形容していますね。

私もそうですが、高く険しい道を目指すよりも、「けももみち」を選ぶ人が多いでしょう。したがって、梅田氏が示す、けものみち」で一番大切な「一人で生きるコツ」はとても参考になります。箇条書きで列記しますね。

・あらゆる面で徹底的にネットを活用すること
・自分の志向性やせんもんせいや人間関係を拠り所に「自分にしか生み出せない価値」(さまざまな要素からなる複合技)を定義して常に情報を発信していくこと
・自分の価値を理解して対価を支払ってくれる人が存在する状態を維持しようと心がけること
・自らのコモディティ化(ありふれた存在になること)に対しては、病的なほどの心配性を持って避けること、
・コモディティ化の予感があったら必ず新しい要素を自分の専門性やスキルに加えていくこと
・積極的に人間関係を構築し、人との出会いを大切にすること
・組織に属するときでも「個と組織の関係」においてきちんと距離感をとって、組織の論理に埋没せず、個を輝かせようと努力すること



さて、結局のところ、梅田さんが挙げる「一人で生きるコツ」とは何なのかおわかりでしょうか。

そうです、「自律的なキャリアづくりのススメ」なのです。


従来のように組織に自分のキャリアづくりを委ねず、一人の自律した人間として、自分自身のの価値を見極め、方向性をはっきりしてキャリアデザインをする。そして、自分の価値が低下しないよう、常に自発的に新たなスキルを習得し続ける。そしてまた、キャリアづくりに大きな影響を与える「人間関係」に配慮する。これらを心がけることによって、いわゆる「幸せなキャリア」が手に入るということなのです。

以上のように書くと、ものすごく大変なことを要求されているように感じるかもしれませんね。でも、梅田氏の喩えを読めばそうでもないことがおわかりになると思います。

“大河のように流れる水量を経済にたとえるなら「一人で生きるコツ」とは、その大河から自分に必要なだけの水を上手に汲み取る術を会得するようなことだ。それが広大な社会の中に、家族を養える程度の「小さな居場所」を作ることになる。(中略)無限から、自分の得意な有限を、上手に切り取ってくることができればいいのである。”


社会の一員として、自分なりに貢献できる生き方を見つける。それが社会に本当に役立つことなら、自分と家族が生きていけるだけの場所や報酬は与えられるはず。梅田氏の考えはこういうことだと私は解釈していますが、これこそ、あなたの「使命」を見つけることだといえるでしょう。つまり、「命の使い方」を見つけるということ。

「使命」を見つけるのはそう簡単ではありません。梅田氏が挙げる「一人で生きるコツ」を実践する中でしか見つからないでしょう。自分でとことん考え、とことん行動する。やはりキャリアにおける基本はこれしかないと思います。

by 松尾順