
キャリアエッセイ(キャリア塾 on site)
「ビジョン型」と「価値観形」(前編)
こんにちは!
A・ヒューマンキャリア塾塾長の松尾です。
先週、
「目標」は「手段」である
というテーマを取り上げました。
これは、ある目標を達成するために、「日々の行動」が「手段」としてあると考えるのではなく、毎日を楽しくするために、「目標」があると考えましょうということでした。
日々の生活こそがあなたの人生です。その人生をより豊かにすることが意味があるのであって、目標を達成することが最優先となり、まるで自分の人生を犠牲にしているかのように、毎日が厳しく、単に艱難辛苦を耐えるといったものになるのは本末転倒だと、私は考えているのです。
さて、今週と来週も、以上のことに関連した話です。
将棋界のカリスマ、羽生善治氏は次のように語っています。
“大切なのは過程です。結果だけなら、ジャンケンでいい”
なるほど。「勝ち負け」がはっきりと出てしまうプロ棋士においても、大事なのは「勝利」よりも「過程」なんですね。もちろん、「勝利」がどうでもいいというわけじゃありません。決着がつくまでは勝利を目指して全力を尽くすわけです。
ただ、単に勝てばいいというわけでなく、指し方に自分なりの哲学や美学、端的に言えば「生き方」がきちんと反映されているかどうかが重要なんだと私は想像します。もし、勝利至上主義となり、どんな汚い手でも使うとなったら、わざわざ将棋を指す必要があるんでしょうか。
また、ビジネスの世界でも、金儲けが究極の目的なら、極論、罪になるようなことをしてもやむをえない。あるいは、「罪を犯して何が悪い」と開き直ることことになりかねませんよね。
結局のところ、私たちは、「どのような生き方をするのか」というのが人生における中心課題であり、なんらかの目標・目的を達成するというのは、その生き方のおまけとしてついてくるもの、というくらいに考えたほうがいいんじゃないでしょうか。
ところで、人の「やる気の素」はさまざまですが、どうやら大きくは、「こんな目標・目的を達成したい」という
「目的志向」
の人と、「日々どのようなことを大切にして生きたいか」を重視する
「価値観志向」
の人の、2タイプにわけることができるようです。
こうした考え方を提案しているのは、プロコーチ、心理カウンセラーの平本相武氏です。
平本氏によれば、私たちの多くは、
「どんな人生を送りたい」・・・「行先」
「どうしてそんな人生を送りたい」・・・「理由」
という「行先」や「理由」がわからないまま、人生という旅を続けていると指摘しています。
ここで、「行先」は「ビジョン」=「ありたい姿」であり、「理由」は価値観=「自分らしさ」のことです。
そして、「目標を立てること」は、旅行でいうなら、「行先」や「理由」を満たすための「乗り物を決めること」に過ぎないと述べています。この点は、私の主張する「目標」は「手段」であるということと同じですね。
さて、自分のビジョン、すなわち「ありたい姿」、および自分の価値観、すなわち「自分らしさ」が、私たちの行動を起こさせるやる気の素です。ありたい姿を目指したい、あるいは自分らしさを追求したいという欲求こそが私たちを行動に駆り立てるということです。そこで、平本氏は、「ありたい姿」「自分らしさ」のことをあわせて「自分軸」と呼んでいます。
平本氏が「自分軸」という言葉を使うのには意味があります。時代の変化が早く、価値観が多様化した現代、誰もが目指したがる理想的な人生というものは消滅しました。自分の生き方は、それぞれが自分で選択しなければなりません。親も含め、他人に人生を決めてもらうことはできないのです。大切なのは自分が納得できるかどうかでしょう。自分で選び取ったかどうかでしょう。そこには、確固たる自分の信念や価値観が前提として必要です。だから、「自分軸」と平本氏は呼んでいるのです。
この「自分軸」ですが、前述したように、目的志向=「ビジョン型」と、価値観志向=「価値観型」に分かれます。わかりやすく言えば、「行先を重視する人」と「理由を重視する人」です。
・「ビジョン型」の人は、未来に実現したい自分の「ありたい姿」を思い浮かべ、「あの姿にたどりつきたい」と思うことでモチベーションが上がる人。「夢」とか「目標」というとワクワクする人
・「価値観型」の人は、今までの経験のなかで育まれてきた「自分らしさ」に基づき、「自分にとって大事なことで一日一日を満たしたい」と思うことでモチベーションが上がる人
平本氏は以上のように2つのタイプを説明しています。
実際、夢や目標について嬉々として語る人がいる一方で、夢や目標については口ごもってしまうけれど、「仕事をする上で大切にしていることやこだわりはなんですか?」と聞かれると、「こんな思いで仕事をしている」と熱く語る人がいますよね。前者はもちろん「ビジョン型」、後者は「価値観型」です。
この2つのタイプ分け、キャリアデザインを考える上でとても重要です。
なぜなら、以前から申し上げているように、まず目標ありきで計画をたてる従来のアプローチにしっくりくるのは「ビジョン型」の人であって、「夢」「目標」の必要性をあまり感じない「価値観型」の人は、従来型のキャリアデザインでは、「出だし」(目標設定)からつまずいてしまうからです。
実は、私自身は明らかに「価値観型」です。夢や目標も、もちろんあります。しかし、より大切なのは、自分を成長させてくれる難度の高い仕事を気の合う仲間とともに仕上げることができるかどうかです。夢のために「自分らしさ」を失うような仕事は絶対にしたくないとも考えています。
私のような「価値観型」の場合、まさに「どのような生き方が理想か」を明確化することが、キャリアデザインを行う上で必要になってきます。それは、キャリアデザイン基礎講座では、
6.キャリアの羅針盤
で解説してある内容です。ぜひ「価値観型」の人はご覧になってみてください。
さて、あなたは、「ビジョン型」ですか、それとも「価値観型」ですか?
次回も、もう少し平本氏の考え方を掘り下げてご紹介してみたいと思います。
by 松尾順
(引用文献)
『成功するのに目標はいらない』(平本相武著、こう書房)


