
キャリアインタビュー:川越満氏
本が売れたことを契機として、講演依頼も入るようになって、期待通り講師としてのキャリアも始まることになります。同じ時期ですが、「コンサナリスト」(R)という造語を作りました。これは、「コンサルタント」と「ジャーナリスト」をブレンドした名称で、私が目指す方向性を示しているような肩書きといえます。なお、「コンサナリスト」(R)は特許などに詳しい友人の助言をうけ、商標登録しています。
キャリアインタビュー:川越満氏(3)
川越さんは、医薬業界の出版、調査、コンサルティング事業を展開するユート・ブレーン(株)の正社員として、同社出版物の編集関連業務に携わる一方、講師、ビジネス本の作家として活躍されています。
業界関係者向けではなく、一般向けの書籍(「病院のしくみ」など)を出すきっかけは何でしたか?
コンサナリスト(R) 川越満氏
ユート・ブレーン株式会社
ある異業種交流会で日本実業出版社の編集者の方にお会いする機会があり、前述の売れた本の話をしたんですね。すると、マーケット(MR)が5万5千人しかいないところで、1万7千5百冊も売れたことに驚かれ、早速この本を送ったところ、同社では「しくみシリーズ」を出していて、「病院」をテーマにした本も出したいから書いてくれないかと依頼があったのです。
そこで、私だけではちょっと厳しいけれど、病院のことに詳しい木村憲洋さんとの共著で「病院のしくみ」を書くことにしたのです。実際書き始めてみると、「図解」も作成しなければならないのでとても大変でした。でも、出版後に、東京・丸の内オアゾにある丸善書店で自分の本が平積みにされている光景を見たときは、本当にうれしかったです。本書は現在までに3万6千部出ています。
すると、若い頃から積極的に参加してきた異業種交流会人脈が川越さんのキャリア形成にプラスになったわけですよね。
はい、そうです。会社内だけでなく、多様な経験を持つ社外の人々との出会いを通じて、私はキャリアアップのチャンスをいただいてきたと感じています。人は自分では偉くなれない、人が自分を偉くしてくれる、という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。
それはすごいですね。ところで、ビジネス本を出版することになった経緯を教えてください。
ユートブレーンは情報誌だけでなく業界向けの各種書籍も発行していましたので、私自身、そうした本の執筆者として執筆はしていたんです。表紙に著者名は出ませんが。私の最初の本は、新人の時に書いた「医薬分業ハンドブック」(共著)です。
ただ、私は夜も眠れないほど苦しんで書いているのに、情報誌では編集者の名前って読み手はほとんど意識しませんよね。私は本来目立ちがりの性格なので、そうして編集者としての自分の存在が読み手に認めてもらえないことに悩み始めていました。31歳の頃です。
そんな時、異業種交流会で出会った友人が「コーチング」の勉強を始めたので、トレーニングの一環として、私にコーチングのクライアントになってくれと依頼してきたのです。私は、その友人とのコーチングセッションを通じて、「なぜ今の仕事に不満を持っているのか、悩んでいるのか」といったことについて深く掘り下げることができました。
そしてわかったことは、私は自分を表現したいということだけでなく、人によい影響を与えたいということでした。情報誌は、文章を通じて自分を表現することはできますが、不特定多数の人たちに広く浅く知らしめる媒体ですから、誰かによい影響を与えているという実感を得ることができません。そこで、たとえば企業の課題を解決するような経営コンサルティングのような仕事がいいんじゃないかと思ったわけです。そこで、「コンサルティング会社に転職してみたい・・・」と考えるようになったわけです。
ところが、実際、関係者に話を聞いてみると、コンサルタントになるには年齢的に遅いと言われたのです。コンサルタントは35歳で独立する人もいる世界です。30歳過ぎでコンサルティング業界に転身するのはあまり得策ではないということでした。これを聞いて私は一時期ずいぶん落ち込みました。
でも、ふと、今の会社でもコンサルティング事業をやっていることに気づいたんです。そこで社長に、講師の仕事などのコンサルティングの仕事もやらせてほしいとお願いしたらあっさりOKが出たんですね。「やりたければやってみなさい」という感じです。ただ、講師の仕事なんて、こちらから売り込むものじゃありませんよね。まずは、知名度や信頼度を高めるために、売れる本を書くことが必要だと考えたのです。
ところで、川越さんはさまざまな方の講演会にも盛んに足を運ばれたとお聞きしていますが。
ピーク時には、異業種交流会にゲストとして呼ばれる方の話なども含め、年間100本くらい講演を聞きにいってましたね。自分の知らない世界の話を聞けるのは楽しいですし、講師の仕事を始めてからは、自分自身もっと話がうまくなりたいと常に思っていますので、すばらしい話ができる講師の方には感動する一方で、ちょっと嫉妬を感じてもいます。(笑)
なるほど。その気持ちわかります。では、最後に、読者の方によりよいキャリアを作っていくためのアドバイスをお願いします。
私は、個人的に「セルフブランディング科学研究所」という事業にも参画していますが、キャリアづくりの要諦は、ドラッカーの言った次の言葉に尽きると思います。それは、
「自分は、何をもって覚えられたいか、自分に問い続けなさい」
ということです。
要するに、自分の強みに気づき、その強みを伸ばすことに注力して、「○○なら、川越さんだね」と言われる存在になること。すなわち、自分(セルフ)のブランドを確立することが、よりよいキャリアづくりの核になるのです。
ただし、自分の強みは、結構自分ではわからないものです。私自身、周囲の人から「川越さんは話が面白いね」「わかりやすい文章を書くね」と言われたことで、自分の強みを発見できたと思っています。ですから、自分に対して発せられる人の意見は、良いことも悪いこともとりあえず素直に聞く、受け入れるという姿勢が必要だと思います。
(聞き手:松尾順)


