
キャリアエッセイ
シナリオ・プランニングとは、未来の環境変化について複数のシナリオを考え、それぞれのシナリオに対して自分はどんな行動をすべきかをあらかじめ十分に検討しておくことでした。
キャリアのシナリオ・プランニング(後編)
こんにちは!
A・ヒューマンキャリア塾塾長の松尾です。
シナリオ・プランニングとは、未来の環境変化について複数のシナリオを考え、それぞれのシナリオに対して自分はどんな行動をすべきかをあらかじめ十分に検討しておくことでした。
では、現実はどのように変化するかというと、後で振り返ってみると、たいていは複数のシナリオの混合体になります。要するに、どれかひとつのシナリオどおりに変化することはなく、自分の予想したとおりには決してなりません。
しかし、さまざまなシナリオを事前に検討しておけば、100%準備万端とは言わないまでも、右往左往することなく、冷静に最適な判断を行うことができる。
これがシナリオ・プランニングの最大のメリットです。
さて、個人のキャリアについて言えば、自分の意思だけでは形成できず、会社の方針や家族状況など、他人の意思や時の運に大きな影響を受けます。この点は、これまでも繰り返し強調してきました。
したがって、自分の意思の及びにくい外部環境の変化について、「こうなって欲しい」という楽観的な見込みだけでなく、さまざまな情報の収集と分析に基づく複数の「キャリアのシナリオ」を考えることが、いざと言うときの意思決定を最適なものにしてくれるでしょう。
ここでは、シナリオ・プランニングの標準的なステップをご紹介します。
●ステップ1:焦点となる問題、決定を下すべき問題を明確にする。
キャリアについて言えば、わかりやすいのは「転職をすべきかどうか」になりますね。もちろん、「今の分野のエキスパートを目指すべきか」といった問題設定もアリです。
●ステップ2:上記問題の意思決定に影響を与えるキーファクター(重要な要因)を洗い出す。
キャリアに関する夢や願望、能力、また会社や家族の状況など自分に身近なミクロ的要因を洗い出します。
●ステップ3:上記キーファクターに影響を与えるマクロ的環境のドライビングフォース(推進力)を列挙する。
社会、経済、政治、自然環境、技術環境など、自分のキャリアに関係してくる世の中の大きな変化を把握するわけです。
●ステップ4:キーファクター、ドライビングフォースを重要性と不確実性で分類する。
ステップ2で把握した「キーファクター」(重要な要因)と、ステップ3で把握した「ドライビングフォース」(推進力)を2つの評価軸で分類します。ひとつは、ステップ1で設定した問題に関わる意思決定が成功するために重要なものは何かという視点での分類、もうひとつは、洗い出したミクロな要因やマクロな環境変化の不確実度合い(どの程度予測できるか)による分類です。
キャリアについて言えば、会社の状況、家族の状況がどの程度キャリアに関わる意思決定に重要な影響を持っているのか、という検討は欠かせませんよね。また、老後の生活に大きな影響を与える年金制度など社会福祉政策が今後どのように変化するのかをおさえるのも避けては通れないことです。
ステップ5:シナリオ・ロジック(大まかな筋書き)を選定する。
ステップ4の重要性と不確実性の分類に基づき、どのように将来が変化するかというシナリオの分岐がいくつかに決まってきます。もちろん、シナリオは作ろうと思えば無数に作り出せるわけですが、詳細な検討が可能な3-5つ程度のシナリオに絞り込むことが必要です。そのためにおおまかな筋書きとなるシナリオ・ロジックを煮詰めていく作業を行います。
ステップ6:シナリオに肉付けをする。
ステップ5で絞り込んだ大まかな筋書きに周辺情報などを加えて「ストーリー」(物語)として組み立てていきます。物事と物事の関係性や因果関係などが現実味をもってわかるように、ありありと描くことで、未来の変化に対する理解が深まります。
ステップ7:シナリオの意味を吟味する。
それぞれのシナリオについて、自分行う意思決定の結果がどうなるかをリハーサルしてみます。これは、いわば「シミュレーション」を行うようなものです。これによって、自分の行動の良し悪し、補うべき箇所などが明確になるのです。
ステップ8:先行指標を選定する。
時間の経過によって、検討したシナリオのうちどれに近い変化が起こりそうかがわかってきます。その手がかりとなる「先行指標」が何かを把握しておくことが重要ですね。
キャリアに関連した例で言えば、あなたがエンジニアで特定のプログラミング言語のエキスパートだったら、次世代のプログラミング言語の採用企業数を先行指標としてウオッチしておく必要があるでしょう。どこかの時点で、あなたが今得意なプログラミング言語の採用企業数と逆転し、だんだんと必要とされなくなっていくことが予測できるからです。
以上が、シナリオ・プランニングの標準的なステップです。
概略の説明なので十分ご理解いただくのは難しいかもしれません。(私の筆力不足です、すいません)
シナリオ・プランニングの方法についての一般的な解説書はいくつか出版されていますので、ご興味のある方はぜひそうした文献に当たってみてください。
キャリアに特化した、より具体的なシナリオプランニング技法については、別途「キャリアデザイン講座」の一環としてWebサイトやリアルなセミナーで公開したいと考えています。もうちょっとだけお待ちくださいね。
by 松尾順


